栽培ガイド

最終更新日:2026/06/02

ジャーマンアイリス


日本で古くから栽培されるイリス(アヤメ)属にはハナショウブとカキツバタがありますが、
ジャーマンアイリスはヨーロッパ原産のイリス・パリダとイリス・バリエガタの交雑種をもとに、地中海沿岸に分布する複数のアヤメ属の原種が交配されて作られた園芸植物です。

下弁(外花被)の付け根にひげ状の突起があることから、欧米ではビアデッド・アイリス(あごひげのあるアイリス)と呼ばれています。

アメリカ・アイリス協会では、ビアデッド・アイリスを高さ20㎝以下で極矮性の「ミニチュア・ドワーフ・ビアデッド」、高さ21㎝~40㎝の「スタンダード・ドワーフ・ビアデッド」、高さ41~70㎝で初期のジャーマンアイリスの面影をとどめる「インターミディート・ビアデッド」、高さ41~70㎝で花が大きい「ボーダー・ビアデッド」、高さ41㎝~70㎝で細い茎に小さい花をつける「ミニチュア・トール・ビアデッド」、高さ70㎝以上の「トール・ビアデッド」の6つのシリーズに分類しています。

ビアデッド・アイリス全体では数万~十万以上の園芸品種があるとみられ、そのなかでも最もメジャーなトール・ビアデッド・アイリスは世界中に数万もの品種があり、今も増え続けています。

【基本情報】


学名 Ilis × germanica
分類(科名) アヤメ科
開花期 4月~5月
高さ (20)70㎝~1m
性状 多年草
水分 ふつう
耐寒性 強い(-20℃ぐらい)
日照 ひなた
特記事項 鉢植え・庭植えともに可


【栽培史】


ジャーマンアイリスの品種改良は1800年代初期にドイツとフランスではじまりました。
ジャーマンアイリスの名のもとになったイリス・ゲルマニカは藤色の花ですが、フランス人のレモンは1840年ごろ、イリス・パリダやイリス・バリエガタなどを交配して、約100種類の花色の豊富な園芸品種を作出しました。

その後、1909年にイギリスのケンブリッジ大学教授で生理学者のマイケル・フォスター卿が、それまでにない4倍体の大輪品種を作出し、続いて『ザ・ジーナス・イリス』(1913)の著者でイリス属の分類の基礎を確立したダイクスが、はじめて黄花の大輪品種(W.R.ダイクス)を作出しました。
1920年にアメリカ・アイリス協会が設立され、気候がジャーマンアイリスの栽培に適しているアメリカが品種改良の中心地になりました。

日本には明治30(1897)年以降にジャーマンアイリスが導入されました。
戦後(1945~)にアメリカから多くの品種が導入され、ポピュラーな園芸植物になりました。

【見どころ・人気種】


アヤメ属の学名「イリス」はギリシア語のイーリス(虹)に由来しますが、ジャーマンアイリスは「虹の花」と呼ぶにふさわしい多彩な花色があります。
花色は単色花(セルフとよばれる)と複色花に大別され、単色には白、黄、ピンク、紫、オレンジ、青、黒(紫黒または赤黒)、赤(緋色ではなくワインレッド)、茶などがあります。

複色には、上弁下弁が同系色で上弁の色が薄い「バイトーン」、上弁下弁が同系色で下弁の色が薄い「リバースバイトーン」、上弁が薄い青で下弁が濃い紫の「ネグレクタ」、上弁が淡色で下弁が他系統濃色の「バイカラー」、上弁が白で下弁が着色する「アモエナ」、上弁は着色し下弁が白の「リバースアモエナ」、上弁が黄色で下弁が赤色の「バリエガタ」、淡色地で濃色の縁どりがある覆輪状の「プリカータ」、1枚の花弁に違う色が混じっている「プレンド」、霜降りや吹きかけのある「ファンシー」があります。

ひげは黄色、オレンジ、その他の色に色づき、花弁とのコントラストも見所です。

初期の品種は花弁の幅が狭く、下弁は垂れ下がっていましたが、最近の品種は花弁の幅が広くなり、下弁はほぼ水平になっています。
花弁の形状には、花弁が波うつ「フリル」、花弁が反転するほど強く波うつ「ラッフル」、花弁の先端が細かく切れ込む「レース」などがあります。

■花形・花色による分類:
  • セルフ:単色花
  • バイトーン:上弁下弁が同系色で、上弁の色が薄い複色花
  • リバースバイトーン:上弁下弁が同系色で、下弁の色が薄い複色花
  • ネグレクタ:上弁が薄い青で、下弁が濃い紫の複色花
  • バイカラー:上弁が淡色で、下弁が他系統濃色の複色花
  • アモエナ:上弁が白で、下弁が着色する複色花
  • リバースアモエナ:上弁は着色し、下弁が白の複色花
  • バリエガタ:上弁が黄で、下弁が赤の複色花
  • プリカータ:淡色地で、濃色の縁どりがある覆輪状の複色花
  • ブレンド:1枚の花弁に違う色が混じっている複色花
  • ファンシー:霜降りや吹きかけのある複色花



【育て方】


■栽培環境:日当たりと風通しが良く、水はけの良い土地が適しています。

■植えつけ:
秋の9月~10月が最適期です。春に植え付ける場合は3月が適期です。
過湿を嫌うので、水はけが悪い場所に植えるときは高さ20~30㎝の高畝作りにします。アルカリ性土壌を好むので、植え付けの前に苦土石灰や草木灰を土によく混ぜておきましょう。

葉がついているときは切り詰め、根茎に子株がついているときは切り離して植え付けます。株間を30㎝ぐらいあけ、根茎の背中が地表すれすれになるように浅植えするのがこつです。

ずっと同じ場所に植えておくと花つきが悪くなるので、2~3年おきに株分けもかねて植え替えをしましょう。

■水やり:雨が少ないときは、植え付けて数日間は水やりをおこないますが、それ以降は必要ありません。

■肥料:
9~10月に元肥として骨粉と硫酸カリを施します。油粕など窒素肥料を多く与えると、耐病性が弱まり軟腐病にかかりやすくなるので注意しましょう。

■病気害虫:
雨が続いたり高温多湿になると軟腐病が発生します。予防のために黄色くなった古い葉は早めに摘み取り、株もとの風通しがよくなるように管理しましょう。
ウイルス病を媒介するアブラムシは見つけしだい駆除します。ナメクジは夜間にパトロールして捕殺しましょう。

■鉢植え栽培:
根茎が長く伸びるので、8号の中深鉢に赤玉土(中粒)7に腐葉土(またはピートモス)3の混合など、水はけの良い用土で植え付けます。
元肥としてマグアンプKなどの緩効性化成肥料を混ぜておきましょう。
土の表面が白っぽく乾いてきたらたっぷりと水やりをします。
1年おきぐらいに株分けをかねて植え替えをしましょう。

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