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最終更新日:2026/08/27
百花の王を庭に迎える ボタン(牡丹)の魅力と栽培ガイド

ボタンは、中国を原産とするボタン科ボタン属の落葉低木です。幾重にも重なる花びらと、堂々とした大輪の花は、古くから富貴や幸福の象徴として愛され、「百花の王」「花王」とも称されてきました。
「立てばシャクヤク、座ればボタン」という言葉で並び称されるボタンとシャクヤク。どちらも同じボタン属ですが、シャクヤクは冬に地上部が枯れる宿根草です。一方、ボタンは枝が木質化して地上に残り、枝分かれしながら横へ広がる、落ち着きのある樹形をつくります。
現在栽培されているボタンは、中国中部-北西部に分布する複数の木本性ボタンをもとに、長い年月をかけて改良されてきた園芸品種群です。一般には Paeonia suffruticosa の名で扱われますが、ヤボタン、紫斑牡丹、揚山牡丹、卵葉牡丹など、数種類の野生種が品種の成立に関わったと考えられています。
園芸品種は育成された地域によって、中国ボタン、日本ボタン、西洋ボタンに分けられます。また、開花期から春咲き品種と寒ボタンに分けられることもあります。現在流通しているのは主に日本ボタンと西洋ボタンです。
日本ボタンは、端正で整った花姿が魅力です。花形は一重、二重、八重、千重、万重と変化に富み、赤、桃、紫、淡紫、白、黒紅など、気品のある花色がそろいます。
西洋ボタンは、鮮やかな黄色やオレンジ、深みのある黒赤色など、従来のボタンにはなかった印象的な花色を楽しめます。
日本では約500品種が知られ、そのうち現在まで受け継がれているものは約250品種とされています。一輪ごとに異なる色彩と花形を見比べながら、好みの品種を探すことも、ボタンを育てる大きな楽しみです。
【基本情報】
| 学名 | Paeonia suffruticosa |
|---|---|
| 分類(科名) | ボタン科 |
| 開花期 | 4月~5月 |
| 高さ | 1.5m~2m |
| 性状 | 落葉低木 |
| 水分 | ふつう |
| 耐寒性 | 強い(-25℃ぐらい) |
| 日照 | 日向 |
| 特記事項 | 鉢植え・庭植えともに可 |
【花王と呼ばれたボタンの歴史】
古代中国では、ボタンは「木芍薬」と呼ばれ、はじめは主に薬用植物として利用されていました。その後、唐代に宮廷や貴族の庭園で盛んに栽培されるようになり、豪華な花姿から「花王」と称されるようになります。
唐代(618~907年)には、多彩な花色や多弁の花、大輪品種が登場し、今日の基礎が築かれました。
日本へボタンが伝わったのは、平安時代初期とされています。当初は薬用植物として渡来したと考えられますが、やがてその美しい花が愛され、陶磁器や織物、絵画、彫刻など、さまざまな美術工芸品に牡丹文様が描かれるようになりました。
江戸時代前期にはボタンの育種が盛んになり、日本独自の園芸品種が次々に誕生します。
寒ボタンは、江戸時代に育成された春と秋の二季咲き性をもつ品種群で、約20品種が受け継がれています。自然に冬季開花する寒ボタンに対し、冬ボタンは春咲き品種を温度管理によって冬に咲かせたものです。寒ボタンは冬には葉が少なく、冬ボタンは青い葉をつけて咲くという違いがあります。
江戸時代から明治時代にかけては、大阪府池田市や兵庫県宝塚市周辺が栽培の中心地となりました。明治20年(1887年)ごろには約260品種が栽培され、苗木は海外へも輸出されるようになります。
新潟県では、大阪や兵庫から優良品種を導入し、明治20年ごろから本格的な生産が始まりました。「紫雲殿」「太陽」「帝冠」「初烏」など、現在も親しまれている名花がこの地から生まれています。

島根県の大根島でも昭和期から栽培が盛んになり、実生苗の選抜によって「花王」「芳紀」「島大臣」「天衣」などの優れた品種が作出されました。現在も新潟県と大根島は、日本を代表するボタンの産地として知られています。

欧米では、ボタンは「ツリー・ピオニー」と呼ばれています。1770~1780年代に中国ボタンが、1844年には日本ボタンがヨーロッパへ導入されました。
20世紀前半には、フランスのアンリやルモワン、アメリカのサンダースらが、黄牡丹や紫牡丹と中国ボタン、日本ボタンとの種間交雑に取り組みました。その結果、鮮やかな黄色の「金閣」「金晃」「金鵄」「ハイヌーン」や、黒みを帯びた深紅色の「ブラック・パイレート」など、従来にはなかった花色の品種が誕生しました。
現在も欧米を中心に種間交配による育種が進められ、ボタンの花色と花形はますます豊かになっています。

【見どころ・人気品種】
ボタンの最大の見どころは、枝先に堂々と咲く大輪の花です。整った一重咲きから、幾重にも花びらを重ねる豪華な万重咲きまで、多彩な表情を見せます。
なかでも人気が高い「島錦」は、鮮やかな赤色の花びらに白い絞り模様が入る華麗な品種です。島根県大根島で、赤花品種「太陽」の枝変わりとして発見され、1978年に品評会へ出品されました。
赤と白の現れ方は株の状態や年によって変化します。赤一色に咲くこともあれば、白い筋が大胆に入ったり、一輪の中で紅白に咲き分けたりすることもあります。株が充実するにつれて美しい絞りが現れやすくなり、咲くまで模様が分からないことも「島錦」ならではの魅力です。

黄花品種の「黄冠」は、アメリカ育成の「ハイヌーン」に、白花の日本ボタン「新扶桑」を交配して日本で育成された品種です。淡い黄色の大輪花を上向きに咲かせ、黄色系ボタンに見られがちな花首の下がりが少ないことが特徴です。
「黄冠」は2003年に品種登録された抱え咲きの八重花で、花には淡い桃色の底紅が入り、香りが強い品種です。

風格ある古典品種から、鮮やかな花色の交雑品種まで、ボタンの世界は実に多彩です。お気に入りの一株を庭に迎え、年を重ねるごとに枝数を増やし、さらに豪華に咲いていく姿をじっくりとお楽しみください。
【育て方】
■栽培環境
日当たりと風通しが良く水はけの良い場所で栽培します。
■植え付け
9月下旬~11月末が最適期ですが、3月までは移植が可能。
植え穴は直径30㎝、深さ50㎝ぐらいとし、元肥としてたい肥を1株あたりバケツに半分ぐらい入れ、土とよく混ぜてから植え付けます。
接木の接ぎ目が10㎝ほど埋まるように土をかぶせましょう。
■鉢植え栽培
鉢植えの場合は、8号ぐらいの中深の鉢を使い赤玉土(中粒)7に腐葉土3の割合で混合して植え付けます。
接ぎ目が5㎝以上の深さになるように土をかぶせましょう。
植え替えは根がいっぱいになり水はけが悪くなるまで必要ありません。
■水やり
露地植えの場合は活着したあと水やりは不要です。ただし、雨が降らない日が続いて乾燥しすぎた場合は潅水しましょう。
鉢植えの場合は土の表面が乾いてきたときにたっぷりと与えます。
■肥料
ボタンはバラと同じぐらい肥料を好む植物です。
発芽期の2月下旬~3月上旬と開花後の5月下旬~6月上旬に固形の発酵油粕や緩効性の化成肥料を施します。
■整枝・剪定
花芽が夏にできるので剪定は落葉後の10月ごろにおこないます。
花芽は枝の先端につくので切らないように注意します。今年のびた枝には花芽がついていないので、枝のもとから2~3芽を残して剪定します。
枯れた枝や重なった枝はもとから剪定します。
台木(シャクヤク)の芽が伸びてきたときは付け根からかき取りましょう。
■病気害虫
春~夏に葉や茎に白い粉が吹いたようになるうどんこ病や葉に黒い病斑ができて広がる黒斑病が発生することがあります。5月~7月まで殺菌剤を散布して防除しましょう。
カイガラムシが枝や幹につくことがあります。幹に侵入するカミキリムシの幼虫にも注意しましょう。
