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最終更新日:2026/04/16

ハナショウブ(花菖蒲)


ハナショウブは日本を中心に朝鮮半島、中国北部、シベリアにも分布する野生のノハナショウブをもとに育成された園芸植物です。
日本で親しまれてきたアヤメ属の植物にはノハナショウブとアヤメとカキツバタがあり、花がよく似ていて見分けが難しいとされていますが、下弁(外花被)の付け根にある目(アイと呼ぶ)で見分けることができます。
ノハナショウブはアイが黄色、カキツバタはアイが白色、アヤメはアイが縞目模様です。
自生する場所も違い、カキツバタは湿地(浅い水中)、アヤメは乾燥地、ノハナショウブは水辺と陸地の境界に自生します。
開花期はアヤメが5月上~中旬でもっとも早く、カキツバタが5月中~下旬、ノハナショウブは6月上旬~下旬に開花します。


栽培史


日本でハナショウブの栽培が本格化したのは江戸時代です。
1681年に刊行された日本最古の園芸書である『花壇綱目』に、ハナショウブの園芸品種について「紫、白、浅黄、薄色、しぼり、飛入、せんよ、白せんよ」と記されているので、江戸初期には「しぼり」「飛入」といった複色花や「せんよ」「白せんよ」の八重咲き品種があり、品種改良がおこなわれていたことがわかります。

江戸中期の天明(1764~72)のころ、江戸麻布桜田下町に住む旗本の松平左金吾(さきんご)定朝は「菖翁」と称し、日本各地から集めたノハナショウブの種子を播き、交配を続けていくことで変異株を見出し、約200品種のハナショウブを作出し、現在のハナショウブの基礎を作りました。
菖翁が育成した品種は「宇宙」「酒中花」など25品種が現存し「菖翁花」と呼ばれています。
江戸後期になるとハナショウブは日本各地に普及し、熊本に肥後ハナショウブ、伊勢松坂地方に伊勢ハナショウブなど地域独特の品種が生まれました。

明治維新以降、日本から欧米にハナショウブが輸出され、アメリカでもハナショウブの育種がさかんになりました。

大正期に神川県農事試験場(現在の日比谷アメニス大船フラワーセンター)で輸出向けに育種された品種群は「大船系」と呼ばれ今でも栽培されています。


魅力・人気種


江戸時代から今日までにあらわれたハナショウブは約2000品種とされ、海外で作出された品種もくわえると約2500品種にもなります。
江戸から明治に作出された品種は「古品種」と呼ばれ、それ以降の新しい品種は「新花」と呼ばれます。
「新花」は性質強健で「古花」より栽培しやすいので、現在は主流になっています。

花の大きさはノハナショウブに近い花径10㎝前後の小輪から花径20㎝以上の大輪まであり、花形は下弁が大きく上弁が小さい三英咲きと上弁と下弁がほぼ同じ大きさの六英咲きがあります。
花色は紫を基調として青、紅紫、白、桃の単色に絞り、覆輪、砂子、染め分け(2色咲き)の複色花があります。
黄花はもともと存在しませんでしたが、キショウブとハナショウブの交雑により1950年ごろはじめて作出されました。

花菖蒲の種類

ハナショウブは花形や草性、発達の歴史などにより江戸系、伊勢系、肥後系、長井系、アメリカ系に大別されます。

江戸系花菖蒲

庭や田んぼに群生させて楽しむ目的で改良されてきたので、風雨や直射日光に強く、色彩豊かで群生美が美しいものが多いです。

花形や高さなどに特別約束ごとがないため、他系統よりも多様な花が多いのも特色のひとつ。


庭園で群生させ上から見下ろして鑑賞します。


花形は江戸っ子好みのすっきりした平咲きから玉咲き、爪咲きのような奇形花まで変化にとみます。

草丈は高いものが多く、茎や葉、花茎は風雨に耐えられるように強くまっすぐに上に伸びる性質をもちます。

肥後系花菖蒲

熊本花菖蒲より改良された品種群。 一輪ずつ咲いた鉢を室内に並べ正座して横から花を鑑賞します。
花弁が垂れ、豪華な六英咲きで花色がはっきりしたものが好まれます。

熊本系花菖蒲

江戸より肥後(熊本)へ移された花菖蒲がその土地の流儀に合った品種へ改良されていった系統で、肥後六花の一つ。

特徴としては、鉢植えで咲かせ座敷にて観賞するので、草丈は低く、花は大輪で対座しての観賞(横からの観賞)に向くよう次第に垂れてゆき、葉とのバランスもとれているものなど豪華さと品格のある花へと改良され、戦後、花菖蒲の主流となっていきました。


伊勢系花菖蒲

江戸時代の終わり頃から、松阪で独自の発展を遂げた系統。

三英咲き、ちりめん地で深く垂れて咲く花弁、雌しべの先端は細かく切れ込みます、丈はややわい性で、この系統にはピンク花の品種があります。鉢植え栽培が主。


三段の雛壇に一輪ずつ咲いた鉢を並べます。花の高さを揃え配色にもこだわります。

花は繊細な淡い色彩で下弁が長くたおやかな垂れ咲きです。

長井系花菖蒲

山形県長井市内で栽培されていた系統で、草丈が高く、花はノハナショウブに似た小輪です。

アメリカ系花菖蒲

日本から導入したハナショウブをもとにアメリカで育種された系統です。



ショウブ・アヤメ・カキツバタ・花菖蒲の見分け方




特徴

  • タイプ:アヤメ科の耐寒性宿根草
  • 植付け時期:秋
  • 開花時期:6~7月
  • 花色:紫、薄紫、白、ピンクなど
  • 草丈:80~100cm
  • 日照:日向むき
  • 用途:花壇、鉢植え、水辺植え、切花



栽培方法


●栽培環境

病虫害とは日当たりと風通しのよい場所が適しています。

●植えつけ

花後すぐ(入梅中)が植え付けの最適期です。初秋でも可能ですが真夏は避けてください。
花壇や畑のような排水と保水性の良い弱酸性の土壌を好みます。水生植物ではないので水の中には植えられません。
花茎を根もとから切り、古い土を洗い流すと同時に枯れた根をきれいに取り除き、緑色の葉は切らずに、株が倒れない程度に浅く植え付けます。
乾燥を嫌うので植え付けたあとビニールかワラでマルチングをします。
同じ場所で長く作り続けているとだんだんと育ちが悪くなるので、3年を目安に植え替えをおこないましょう。

●枯れ葉の除去

夏から秋にかけて茶色くなった葉は病気の原因になるのでつけ根から取り除きます。

●肥料

4月に化成肥料を株もとに少量施します。有機肥料は根腐れの原因になるので避けましょう。

●病害虫

高温多湿になると立枯れ病、根腐れ病が多く発生します。
湛水を避けることと枯れ葉の除去をまめにおこなうことで予防につとめましょう。
花や蕾に灰色かび病が発生するので殺菌剤を散布しましょう。
ズイムシ(アヤメキバガの幼虫)は芽を食害するので春と秋にオルトラン粒剤などの浸透性殺虫剤を散布して防除します。
ヨトウムシやナメクジは夜間にパトロールして捕殺しましょう。ウイルス病を媒介するアブラムシは見つけしだい駆除しましょう。

●鉢植え栽培

1株であれば3.5~5号、複数株の寄せ植えの場合は6~7号の中深鉢に赤玉土(小粒)7に硬質鹿沼土(小粒)3の混合など水はけの良い用土で植え付けます。
腐葉土などの有機物は根腐れの原因になるので混ぜないほうが安全です。
4月に化成肥料を置き肥し、ハイポネックスなどの液肥を与えます。
土の表面が白っぽく乾いてきてからたっぷりと水やりをします。根腐れをおこしやすいので腰水栽培は避けてください。
鉢植えの場合は毎年植え替えをして土を新しくしましょう。


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