奇跡の存在
こんな熱い夏の日に、しみじみありがたいものは、我が家のキッチンに緑陰をもたらす隣家の大きく育ったウメの木です。

重なり合った暗い緑の葉は、わずかな風にも揺れ、ギラギラと照りつける太陽光を、扇ぎ返します。さらにウメの木の下方には、我が家のアンズの幼木が明緑の葉を茂らせ、地面が熱せられるのを防いでいます。
やっと日が沈んだ夕食どきには、夏の美味のひとつ、冷奴の出番も多いでしょう。豆腐の材料は、大豆です。日本人の主食の米も植物です。
わたしたちと密接なつながりをもつ植物という存在ですが、では植物はどんな食事をして、生きているのでしょうか。その答えは、小学生の頃学んだとおり、光合成です。しかし、ただ暗記した当時と異なり、今、自分の意思で植物を育てている視点から植物の食事を考えると、新鮮な感動があります。
無機物の材料から有機物を創る
人間だけでなく、ペットも野生動物も、家畜も、魚も、一部の下等動物をのぞくすべての動物は食事をし、食するものは有機物です。かつては植物も、腐植質の有機物を養分としていると考えられていました。ところが19世紀後半、植物は無機質を養分としていることが明らかになったのです。
植物は、根から水を吸い上げます。植物体表面の気孔は、大気中から二酸化炭素を吸収します。

葉や茎の細胞の中にある葉緑体は、太陽エネルギーを受け止めます。材料は、水と二酸化炭素だけです。植物は、光エネルギーを使い、この二つの材料から、有機化合物を生成します。これが光合成です。
さらに植物の根は、水分とともに、窒素やリンを土中から吸収しています。植物体内に生成された炭水化物は、窒素やリンなどの無機物成分と結びついて、タンパク質、脂肪、セルロース、酵素、ビタミンなどを合成するのです。ここまでくると、わたしたちの健康に大切といわれている聞き慣れた言葉がでてきました。このように理論的には学んでも、やはり、太陽と空気と無機物から、米や小麦や大豆、みかんやメロンやリンゴが生まれるのは、不思議です。