魅せるチカラ
一週間の英国滞在を終え、帰国しました。成田より都内に入るまでは緑が多く、東京に帰ってきたと思わせるのは、目に痛いほどの光でしたが、レインボーブリッジを渡る際は、デザインのすぐれた人工物に、日本を実感しました。
心やすらぐ人工物
今回のロンドン滞在中は、そのかなりの部分を郊外や田舎の庭園で費やしました。英国の美しさは、都会にではなく、田舎とその途上の景色にあります。なだらかな丘陵地帯、広がる緑の牧草地、それを囲む木々、草をはむ羊の群れには小さな赤ちゃんが混じり、道路と牧草地の境界を形成するメイ・ブロッソムはまさに5月の白い花が咲きこぼれています。古いほど価値のある家々は、緑で縁どられています。どこを切り取っても、絵のように美しいのです。

ロンドンは空気が悪く、騒音にも悩まされますが、腰を下ろせるベンチと深い緑のある大小さまざまな公園に巡り会えます。
これらのことから、英国は自然のやすらぎに恵まれていると錯覚してしまいます。しかし、このようなシーンのすべては人工物なのです。
歴史を振り返ってみましょう。英国はもともと緯度が高いため、森林が国土の3分の1もなかったのですが、それらは建築材料や燃料として消費され、さらに5分の1以下に減ってしまいました。その上、産業革命以降の産業の発展によって自然は荒廃し、都市は公害に悩むことになりました。そのことを反省し、全土で緑の回復に努め、都市においては王室の狩猟場を公園として開放した結果、現在のような樹木が点在する牧草地帯とロンドンの公園が創りだされたのです。田舎の樹木をよく観察すれば、ほとんど直線的に植えられているのがわかります。
ところが、この人工物の美しさをめざして、世界中から詣でる人々の流れは、
大きなうねりとなっています。わたしは今回も、英国人のもつ「魅せる力」を強く感じました。