レインコートと日よけ帽子をトランクにつめて
ちょうど今頃、わたしはロンドンに滞在しています。

ガーデン王国イギリスのベストシーズンは5月、そしてジューンブライドというように6月なのです。冬の間、閉鎖したり時間制限したりしていた庭園、ナーセリーや植物園に、世界中からガーデナーが集まります。チェルシー・フラワーショーもこの時期に開催されます。とはいえ、凍えるような冷たい雨の降る日もあり、セーターとコートは手放せません。チェルシー・フラワーショーが終われば、イギリスにバラの季節が訪れるというのが決まり文句です。しかし、今年の荷物の中に、わたしは日よけ帽子と半そでTシャツも入れました。

昨年のことです。5月の下旬にはバラが最盛期を過ぎようとしていました。そのバラも、地面は乾ききり、病害虫にやられ、悲惨な状態でした。そう、暑さが前倒しでバラを襲ったのです。多くのバラが咲き誇る機会もなく夏を迎え、ヨーロッパは猛暑に見舞われました。ほとんどの家にエアコンがないこの国で、真夏に気温が40度近くまで上がったのです。かの国のガーデナーたちも、この天候異変を、ガーデンダイアリーにしっかりと記入したでしょうから、きっと今年のバラ対策は万全でしょう。
さて、イギリスに来る目的はもちろん庭ですが、日程の3分の1を占めるのは美術館滞在です。滞在という文字の通り、お気に入りの絵のある美術館で、ランチやティーも含め、1日を過ごします。イギリスにおける美術館滞在は、本来、冬のライフスタイルなのですが、この時期は皆が庭に目を向けているためか、空いていて居心地が良いものです。
大英帝国がその資力をもって世界中からかきあつめた名画に、無料で、

何時間でも、ソファに座ったままで、接することができます。わたしはそこで、色使いを感じとります。画家の配色は、わたしのような凡人には考えも及ばないのですが、わたしの中のなにかをかきたてます。
庭園は、人の力の届かない範疇がたくさんあります。わたしたちは、あくまで自然の一部のお手伝いをしているにすぎないのだと思います。色の組み合わせもそのひとつでしょう。やりすぎてはいけないという自戒も込めて、わたしは名画と向き合うのです。