『金森朝子の庭物語』 金森朝子プロフィールへ
3.学名は日本人向きにできている
学名には、ラテン語が使われています。英語ですらお手上げなのに、ましてやラテン語なんてと思われる方もいらっしゃるでしょう。しかしラテン語は、むしろ英語圏の人には、発音が難しいようです。なぜならラテン語の発音は、英語よりも、日本語のローマ字にとてもよく似ているからです。つまり、日本人がラテン語のスペルをローマ字読みすると、そのままラテン語に近いのです。
luteus=ルテウス、orientalis=オリエンタリス、coreopsis=コレオプシス、mimulus=ミムルス、というように発音します。いかがですか。ローマ字と思って読んでみると、そっくりでしょう。英国では、庭園や種苗店でも必ず学名が表示されています。わたしはそれを書き写すとき、声に出してローマ字読みするのですが、hibiscusをヒビスクスと発音すると、周囲の人は、ラテン語ができる日本人かと、ぎょっと見ます。彼らはhibiscusを、ハイビスカスと、慣れ親しんだ英語読みをしてしまうからです。
少し安心していただけましたでしょうか。

4.学名は情報の宝庫
わたしが学名をおすすめするのは、植物を正確に特定できる、世界共通仕様、発音が日本人向きということ以上に、学名は雄弁ということがあります。学名を暗記する必要はありません。ただ学名を眺めるだけで、あなたはそこから多くの情報を得られるのです。その理由は、国際条約で決められた命名法にあります。次回、学名はどのようにして命名されているかについて、お話します。
今回はひとつの学名を紹介しましょう。
Hydrangea macrophylla Seringe var. otaksa Makino
これは、和名ではアジサイです。正確には、アジサイの中でも、変種のotaksa(オタクサ)を示しています。日本の梅雨に開く、美しくもすこしさみしげなアジサイは、世界の園芸家の賞賛する植物であり、その学名は世界中で認知されています。ところで「オタクサ」とは、江戸時代長崎出島オランダ商館医であったシーボルトの日本妻「お滝さん」に由来した命名なのです。あなたがどこか異国の地で、雨に濡れさえざえとみえるアジサイの足元に、この学名を見たとき、遠い時代のお滝さんの人生に思いをはせるというところまで、思考は飛躍できるのです。

デザインのヒント:扉の向こうにドラマがある
今回も、すぐにできるデザインをひとつご紹介しましょう。窓や道路からの眺めには、どなたも気を配るでしょう。それに加え、玄関やキッチンのドアを開けたとき目に飛び込んでくるシーンに演出を凝らすのは、本当におしゃれです。美しい葉や独特の雰囲気のある鉢、エキゾチックな置物など、第一印象の強いものが効果的です。また、道路からの眺めを考える際も、家の前に立ちどまって見る角度だけでなく、遠くから近づいてきたとき、目を誘うように、遠目に印象的な植物を配置するなど、ワンポイントの工夫を凝らしましょう。


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